読書と雑感

読書を好きになって、日々更新される自分の価値観や視点を忘れないように書き留めておきたくて始めました。
若者の戯言と思って暖かく見守っていただけると幸いです。

又吉直樹「火花」

こんにちはこんばんは飛び魚です!


ナイスしていただけると純粋に嬉しいです、ありがとうございます!笑

みなさんの記事を読んで、自分の知らないことをたくさん知り、新しい興味がどんどん湧いてきます。


さて、又吉さんの「火花」、読ませていただきました。


前回「火花」が又吉さんにとって初の小説とか言ってましたが、「第2図書係補佐」「東京百景」さらに数作の共著と、作家さんとして以前から活動されておられるようで、、適当なことを言ってしまい、すみませんでした。笑


又吉さんといえばお笑いコンビ、ピースとして、ピカルの定理やIPPONグランプリなどで活躍し、ほかの芸人の方にはない不思議な世界観を持つ、とてもおもしろい方という印象がありました。
感情を表情から読み取れないところが、個人的にツボです。笑



何度か番組で取り上げられていますが、大変な読書家ということで、あの不思議な世界観も様々な作品を読んだからこそのものなのかな、と思っていました。


そのぶん又吉さん自身が執筆された小説を読むということに、とてもワクワクしていました。

芸人だから、TVに出てるから、というのではなく、又吉さんという人物の世界観に少しでも触れられる、というところが大きかったです。


この作品では芸人の世界が取り上げられており、純文学とは謳っていますが、自分のようなミーハーでもスラスラと読むことができました。


主人公が尊敬し、師と仰ぐ先輩芸人、この人がとてもおもしろい。人間的に。
常にフラットな視点で、世間とか自分の中のプライドみたいなものに左右されず、単純におもしろいことに向き合う、その姿勢がとても眩しかったです。



そのため、読者がドキッとしてしまうようなことを、物語のあちこちで言っています。


「聞いたことあるから、自分は知っているからという理由だけで、その考え方を平凡なものとして否定するのってどうなんやろな?これは、あくまでも否定されるのが嫌ということではなくて、自分がそういう物差しで生きていっていいのかどうかという話しやねんけどな。」


「自分とはこうあるべきやと思って、その規範に基づいて生きてるやつって、結局は自分のモノマネをやってもうてんねやろ?だから俺はキャラっていうのに抵抗があんねん。」


どちらのシーンでも、先輩が言わんとすることがピタリと自分にも当てはまっていて、思わずうなづきながら読んでいました。


周りが決めた見えないルール、そもそも誰が決めたのかわからないルール、そういったものにいつのまにか囚われ、あるいは囚われた錯覚をして、日々を過ごしている感じは、自分も常にあります。


そして、一番強く響いたシーンは、意外にも先輩ではなく主人公の言葉でした、、


「僕たちは世間を完全に無視することは出来ないんです。世間を無視することは、人に優しくないことなんです。それは、ほとんど面白くないことと同義なんです。」


世間やルールに縛られない先輩。その先輩に憧れ、純粋に自分のお笑いと向き合いながら、芸人としての道を一段一段登っていった主人公。


先輩の理想とするお笑いは、確かにとても魅力的で、しごく真っ当なもので、誰もマネできないようなところに位置していましたが、それに対しての主人公のこの言葉は、まさに一段一段お笑いの階段を上ってきた、彼なりの答えのような響きを感じました。


又吉さんがこれまでに感じてきたことが、主人公や先輩を通して語られているのかなと思いながら読ませていただき、全体としてとても面白かったです。


次回作はどんな又吉ワールドが繰り広げられるのか、今からとても楽しみです!



余談ですが、先日友人に面白い本を貸してくれと言われて、黄色い目の魚をお貸ししました。


その友人は女性の方なんですが、女性目線からあの本を読むとまた違った印象を受けたらしく、とても面白かったと言ってくれて、、


自分が書いたわけではないのに、とても嬉しかったです。本で人と繋がるっていいですよね!


茶王!



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島本理生「あられもない祈り」

こんにちはこんばんは飛び魚です!


島本さんの本作は、昨日読了した佐藤さんの透き通ったみずみずしい青春小説とは打って変わり、大人の男女が織りなす重厚な恋愛のお話でした。


そもそも恋愛なのかもよく分かりませんでした、、笑
完全に読者としての自分の未熟さによるものです。


でも恋愛って、飛び抜けて幸せそうなやつもいれば、飛び抜けて苦しそうなやつもいるんだなって、自分の中で幅を広げられたような気もしています。


大人の方、苦しい恋愛経験をされた方であれば、自分の経験も踏まえた解釈をすることができて、より深いところまで考えをめぐらせることができるような作品だと思います。


あ、わかんねえって特に思ったところが、、


「私との関係は別々のシャツのボタンと穴を無理やり合わせようとするものだったから、いったん外してしまったら完璧に離れるしかなかった。でも、一つボタンを外すたびに、よそのボタンを掛けるような恋に、なんの意味があると言うのだろう。」


一応補足すると、主人公の女性は愛人関係にあり、その相手との関係をシャツのボタンの掛け合わせで例えている感じです。


強烈ななにかを感じなくもないのですが、考えるほど難しくなる気がしました、どなたか読んだことのある方がいらっしゃったら軽~く教えてください。


解説を担当した西加奈子さんは、それはもう絶賛していて、おっしゃっていることはああなるほどと理解できるんですが、それはそう言われてみれば、という感じで、自分の実感を伴うことは残念ながらなかったです。


いつかもう一度この本を読んで、主人公の言わんとすることの数パーセントでも分かるようになれればいいなと思います。当分無理だと思います。笑


そんな中でも、少しは自分にも感じるものがある言葉もありました、、


「いつだって自分だけが悪いのだと思っていた。いつだって自分だけが我慢するべきなのだと信じていた。そうすればなにも見ずになにとも戦わずに思考停止していられた。ぜんぶ自分が悪いだなんて、ぜんぶ自分が悪くないと言ってるのと同じことだ。」


隙を見れば自己嫌悪に陥ってしまうような、ひどく落ち込んでいる時、原因を相手ではなく自分の中に求めることによって、本質から目を逸らしている、、


自分が悪いんだって思うことで、少し問題が軽くなるような、安心したような気持になるってことが、このことを裏付けていると思います。


これが恋愛という関係の中に起こると、それはもうややこしくこじれていくでしょうね。笑



読むのに体力を必要としましたが、いい勉強になりました。島本さんといえば究極の恋愛小説と呼ばれている「ナラタージュ」もあるので、機会があればぜひ読んでみたいと思います。


次はピース又吉さん初の小説、「火花」を読む予定です、めっちゃ楽しみです!


茶王!



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佐藤多佳子「黄色い目の魚」

こんにちはこんばんは飛び魚です!


ナイスしていただいたみなさん、ありがとうございます!どんどん更新します!



週末で見事にリズムを崩し、読書していても眠くなって本の内容がよく吹っ飛びます。


そんな状態でも、佐藤さんの「黄色い目の魚」とってもおもしろかったです、ガチです。


佐藤さんの書かれる青春小説は、本当にまっすぐで濁りがなくて、読者の心のもやもやをきれいさっぱり洗い流してくれるんですね。


「一瞬の風になれ」も大好きで、高校の頃一読して、つい最近も再読しました。


量が多い割に、作中のスピード感がこちらに伝わって思わず目が先へ先へと走っていく、で、気付いたら終わってしまう、、そんな感じです。


抽象的で稚拙な表現で申し訳ないんですが、本当にそう感じるのです。


本作では高校生の男女2人の視点から物語が進んでいきます。どちらも世の中を斜めに見ているようなところがある、少しひねくれた者同士で、思わずクスクス笑ってしまうようなことを真顔で言っているような印象でした。


片方の女の子は、小さい頃からかんしゃく持ちで、友達ができてもすぐに絶交とかしちゃいます。すごいですよね。笑


「キライな人が世界中に満ちあふれていて、私のいる場所なんてありゃしない。一人キライになるごとに、自分の居場所がごりごりと浸食されていく。サイテーの気分。人をキライだという気持ちは汚い。毒がある。自分の出す毒にやられて自分が汚れて苦しくて死にそうになる。」


それでも憎めないのは、人のことがキライでも、キライになる自分をどこか否定的に見ているからでしょうか。カタカナでキライと書かれると、ほんとにキライなのかどうか、気持ちが薄れるような気もします。


そしてこの女の子は、もう一人の主人公である男の子を好きになり、それを通してキライな人とも関わるようになっていくのです。


この男も考えることが少し周りとズレています。それを象徴するかのように、クラスメイトの似顔絵ばかりを教科書に落書きし、書かれた相手が不快になるような嫌な表情を描き出します。お前らどんだけ周りに嫌われたいんだって感じです。笑


しかしこの絵が二人をつなぐ点であり、線になっていきます。


女の子の似顔絵だけがどうもうまく描けない。これだ、と思えるような表情を描き出すことができず、その完成を追うようにして、二人の距離は少しずつ近づいていきます。


「村田(女の子)のしゃべり方は、すげえぶっきらぼうで率直で、余計な語尾がついてなくて短い。生まれてから一回も嘘や冗談を言ったことがないような気がした。輪郭が見えねえ。キャラの輪郭、みたいなのが見えねえ。果てが、わかんない。」


とか言いながら、彼女との普段の会話や表情、雰囲気を彼なりに感じながらキャンバスに描いていきます。


そしていよいよ絵が完成するんですが、若者のすれ違いというかそんな感じになって、彼女のもとに届ける最後のところまでハラハラしました。


同じ場面でも、それぞれの視点から書かれているので、お互いの相手に対する印象とか気持ちがよくわかりました。片方がなんてことなく過ごしていても、片方はその光景から相手の底知れなさのようなものを感じ取り、彼・彼女のことをもっと知りたい、もっと、もっと、、となっていく。


自分も相手にどう見られているのかとよく気にしますが、相手の受け取り方は往々にして異なり、時に思いがけない、まったく意図していなかった印象を与えてたりしますよね。


解説で角田光代さんが、逃げることとごまかすことに長けていた高校生の時の自分に読ませたいとおっしゃっていました。


このような作品を高校生とか中学生のうちに読んでおくのは、とてつもない影響を与えるんじゃないかと今更ながら思います。いろんなことから逃げて先延ばしにして、どこか熱くなりきれない、マジってかっこ悪い、そんなことを自分もなんとなく考えていました。それは、現状に甘えて自分を見つめず、なるようになると根拠のない自信とともに、無為に毎日を送る自分への言い訳でしかなかったように思います。



小説を読んでいて、なんか好きだなっていうジャンルがあって、その一つが今作のような青春ものです。やっぱり自分が経験してきたこととか、その時思ったこと感じたことを振り返れるような内容のものは、読みやすいしおもしろいですよね。


そう考えると、これからどんどん新しいことを経験すればするほど、小説の面白さに触れていくことができるのかなって思って、とてもワクワクしています。なのでやっぱり、読書はいいですね!!


茶王!